ワンポイント話し方教室/プレゼンテーション
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1― プレゼンの足を引っ張る「話グセ」
高津和彦の「ワンポイント話し方教室」へようこそ!
先日、NHKの熱中時間という番組を見ました。
これは、毎回さまざまな趣味に熱中している人(熱中人)を取り上げる教養バラエティー番組です。
僕が見たのは、「吊り革熱中人」という回。
番組の内容は興味深かったのですが、この放送の中で、一つ気になることがありました。
スタジオの観客に、影アナが拍手を促す場面が何度もあったのですが
その時のアナウンサーの台詞。
「さあ、拍手の方(ホウ)、どうぞ!」
これが、頻繁に。
いったい「拍手の方」ってどんな方? なら「拍手じゃない方」があるのか?
と心の中で突っ込みを入れてしまって、結局は番組の内容そのものではなく
「方」のことばかりが僕の記憶に残ってしまったのです。
最近、あちらこちらで耳にする、この「方」。
いったい、どこから始まったんでしょうか?
僕が最初に耳にしたは、スーパー・コンビニのレジやレストランでした。
「お弁当の方、温めますか?」
「おつりの方、50円になります。」
「鉄板の方、お熱くなっておりますのでご注意ください。」
「空いているお皿の方、お下げしてよろしいでしょうか。」
「ドレッシングの方、和風とシーザーからお選びいただけます。」
よく見て下さい。
これらの「方」、全部なくしてしまって「は」「が」「を」などに代えても全く問題ないと思いませんか?
(むしろ僕は、そちらの「方」がスッキリして好きですが)
「方」は必要ないのに、なぜこんなに広まったのでしょうか。
もちろん、使われ始めた場所が、大勢の人が利用するところであったためでもあるでしょう。
しかし、広まったということは、ある程度、ある層に「受け入れられた」ということです。
僕の推測ではありますが、サービス業から広まっていったことからも、これは「丁寧なニュアンス」を付加する目的で使われ始めたのではないかと思います。
日本語では、短い言葉よりも長い言葉の方が丁寧、という雰囲気があるからです。
例えば、ブティックで「この服の、他の色はありますか?」と聞いたとします。
すると店員が、別色の同製品を出して来て言うわけです。

「・・・これ。」
意味は通じても、確実にクレームの対象になりますね。
「これです。」
「こちらです。」
「こちらでございます。」
というように、余分が付いて長くなるほど、丁寧な感じがします。
その行き着いた先が「こちらお色違いの方になります。」なのではないでしょうか。
また、日本語の話し言葉には、様々の「余分なもの」が付加されますが、ニュアンスや感覚を伝える目的の他に、「リズムをとる」目的で加えられることがあります。
文節ごとの「〜でね」「〜でさぁ」などです。
このリズムをとるための「余分」は人によって様々で、話しながら「えー」を連発する人もいますし、文末に「〜です、はい。」と付ける人もいます。
このように「丁寧でリズムがとりやすい」という理由で、サービス業で「方」が使われるようになり、そのニュアンスを共有した人々に広まっていったのでしょう。
(スピーチでの「ご指導・ご鞭撻の程」「なにとぞお引き立ての程」の「程」と、似ていますね)
初めはずいぶん違和感を感じましたが、今ではもう言わない人がいないくらいで、サービス業での定型句となった感があります。
他業種でも、エンドユーザーに接する機会の多い業種では徐々に広まりつつあるようですが、それでもまだ『業界用語』の域であり、多用は単なる『話しグセ』です。
ですから、僕はアナウンサーが「拍手の方」と言うのは変だと思いますし、気になります。
いったいどうして、ディレクター・プロデューサーなり、他のアナウンサーなりが、どこかの段階で「これはおかしい!」と言わないのだろう、と疑問です。
出演者も「これは〜」で済むところを「こちらの方なんですけれども〜」と言っていて、さも正しい日本語の手本のように電波に乗せて流しています。
これから、もっともっと日本人が世界を舞台に活躍しなければならない時代に、言葉がどんどん持って回った言い回しになっていくことは、僕にとって危惧すべきことです。
特に、プレゼンや商談など、意思をはっきり伝えなければならない場面では、「方」に注意して下さい。
話しグセで「方」を多用する人、けっこういます!
ちゃんと伝えなければならない時に「〜の方は〜の方で〜の方となっております。」は、全くの余分です。
耳障りで聞き苦しいばかりか、「方」ばかりに耳がいき「あ、また言った・・・」という印象だけが残って、肝心の話の内容を聞いてもらえないことになりかねません。
それは丁寧に言っているのではなく、ただコンビニなどで聞いた話し方が「伝染している」だけです。
「えー」「あー」などと同じで、単なる話しグセです。
また、丁寧なニュアンスは同時に「曖昧にぼかした印象」とも言えます。
商品への自信や明快さが、「方」によって打ち消されてしまうのです。
「こちらの商品の方ですが、ポイントの方は多彩な色のバリエーションの方になります。」ではなく、
「この商品のポイントは、色です!」と言い切りましょう。
こういう時は、スッキリ短く、ハッキリ言い切るのがコツです。
プレゼンは、舞台のようなもの。1対1の接客とは違います。
マジシャンが自信たっぷりに空っぽのシルクハットを見せ、「さあ、この中から・・・」と観客たちの視線と興味をひきつけて――
「こちらがですね、鳩の方になります。」 では、台なしだと思いませんか?
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